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「同じ」葛根湯でも「違う」のです

同じ名前の漢方薬でも、会社によって原料となる生薬の量、配分が違いがあります。例えば、葛根湯。ツムラの葛根湯(エキス顆粒医療用)、コタローの葛根湯(エキス細粒)、クラシエ葛根湯(エキス細粒)は以下のようになっています(これらは全て医療用漢方製剤の内容です)。

ツムラコタロークラシエ
カッコン(葛根)4.0gカッコン(葛根)4.0gカッコン(葛根)8.0g
ケイヒ(桂皮)2.0gケイヒ(桂皮)2.0gケイヒ(桂皮)3.0g
タイソウ(大棗)3.0gタイソウ(大棗)3.0gタイソウ(大棗)4.0g
シャクヤク(芍薬)2.0gシャクヤク(芍薬)2.0gシャクヤク(芍薬)3.0g
マオウ(麻黄)3.0gマオウ(麻黄)4.0gマオウ(麻黄)4.0g
ショウキョウ(生姜)2.0gショウキョウ(生姜)1.0gショウキョウ(生姜)1.0g
カンゾウ(甘草)2.0gカンゾウ(甘草)2.0gカンゾウ(甘草)2.0g

こうして比較すると、クラシエの葛根湯エキスのカッコンの多さが目立ちます。カッコンは、筋のけいれんを改善する作用があります。シャクヤクにも同じような効果があります。首のこりがあることが葛根湯を用いる際の目印の一つになります。首こりが特に顕著な患者さんにはクラシエの葛根湯が合うかもしれません。ツムラさんの葛根湯にはショウキョウが2.0g含まれています。ショウキョウは消化吸収を助ける働きがあるため、胃腸が弱い患者さんで、葛根湯が必要な場合には、ツムラさんの葛根湯が合うかもしれません。コタローさんの葛根湯はクラシエさんとツムラさんのちょうど間くらいのところにあるかもしれません。

薬局さんでも葛根湯が市販されていますが、その場合の葛根湯に含まれる生薬の量は、だいたい3分の2くらいになります。例えば、ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒Aは、市販漢方製剤ですが、以下のような生薬の構成になっています。
カッコン2.68g、ケイヒ3g、タイソウ4g、、シャクヤク3g、マオウ2.01g、ショウキョウ1.34g、カンゾウ1.34g
医療用漢方製剤に比べると、効果もマイルドになるであろうことは想像出来るかと思います。

以上から、同じ葛根湯という名前のお薬でも、中身はけっこう違いがあることがご理解頂けると思います。これらは、どれがいい悪いということではなく、患者さんの状態に合わせて処方するものと思われます。

各社の(医療用漢方製剤の)葛根湯の効能・効果は以下の通りです。

ツムラ葛根湯の効能又は効果
自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん

コタロー葛根湯の効能・効果

頭痛、発熱、悪寒がして、自然発汗がなく、項、肩、背などがこるもの、あるいは下痢するもの。感冒、鼻かぜ、蓄膿症、扁桃腺炎、結膜炎、乳腺炎、失神、蕁麻疹、肩こり、神経痛、偏頭痛

クラシエ葛根湯の効能・効果

感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み

共通するのは、頭痛、発熱、悪寒がして、汗をかかないような感冒の時に用いるということです。感冒だけではなく、肩こりにも効くのは、上記の説明でご理解頂けると思います。変わったところでは、乳腺炎などの炎症性疾患にも効果があるというところでしょうか。炎症といっても、内臓の炎症には用いません。身体の表面近くで起こっている炎症に用います。

マオウ、ケイヒ、カッコンなどの生薬が身体の表面近くの症状を軽減すると考えられています。